日本大学医学部案内
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2)不随意運動:パーキンソン病,ジストニア,各種振戦に対する,最適の脳深部刺激療法を確立する。また,術中の神経活動記録から,不随意運動発現のメカニズムについて検討する。3)運動麻痺:脳卒中後疼痛に,大脳皮質運動野刺激または脊髄刺激を施行し,除痛効果のみならず運動機能回復にも有効な治療法を開発する。4)オンデマンド型刺激装置の開発:脳脊髄刺激装置が,刺激を必要とするときだけONとなり,刺激を必要としないときにはOFFとなるシステムを開発し,その有用性を検証する。5)小動物用の慢性植え込み型脳脊髄刺激装置:小動物用の慢性脳脊髄刺激装置を開発する。6)排尿障害:脳深部刺激ならびに仙骨部磁気刺激による排尿機能の回復。7)経頭蓋磁気刺激治療:経頭蓋磁気刺激を用いた疼痛,運動麻痺,不随意運動,排尿障害などの治療8)髄腔内薬物注入:薬液注入ポンプとバクロフェンを用いた痙縮の治療。9)癲癇,痴呆,精神疾患:癲癇,痴呆,精神疾患に対する脳脊髄刺激療法において,倫理的問題を解決し,実用化についての検討を開始する。10)産学連携:脳機能障害の制御・再建のための電子機器の開発について,これに関連する多くの企業との産学連携を推進する。 難治疾患治療開発グループでは,癌や高血圧などの難治性の疾患に対する治療薬の開発を目的として,DNA認識低分子有機化合物ピロールイミダゾール(PI)ポリアミドを用いた創薬開発を行っています。PIポリアミドは芳香族アミノ酸 N-methylpyrrole(Py)およびN-methylimidazole(Im)で構成される化合物であり,DNAに配列特異的に結合する性質を持つ。PyとImの組み合わせ次第で,多様な配列のDNA に結合させることが可能であり,またその親和性はDNA 結合蛋白質とDNAの結合力に匹敵することから,このPIポリアミドを各遺伝子のプロモーター領域の転写因子結合部位に結合させることで,遺伝子特異的な発現制御が可能となります。siRNA などと比べて安定性が高く,特別なドラッグデリバリーシステムを必要としないことから,分子標的治療薬として大きく期待される化合物です。 これまでに,我々のグループでは,各種の疾患で発現異常を示し,それにより疾患の発生や悪性化を促進している遺伝子に対してPIポリアミドを設計し,その効果の検討を行ってきました。抗腫瘍PIポリアミドの代表例としては,1)多種の腫瘍で増幅や発現亢進の見られるMYC転写因子のDNA結合部位であるE-box配列を認識するPIポリアミドを設計し,同分子が骨肉腫細胞株を含むいくつかの腫瘍細胞株に対しin vitroおよびin vivoで増殖抑制効果を示すことを確認しました。さらに,2)前立腺癌特異的に発現し癌の発生・増殖に寄与しているTMPRSS2/ERG融合遺伝子の生成・発現を抑制するPIポリアミドを設計し,同分子が前立腺癌細胞株における融合遺伝子の生成抑制,in vitro,in vivoの両方における腫瘍増殖能の低下を誘導することを確認しました。   脂質代謝に関連するPIポリアミドとしては,3)脂肪や糖質の代謝を亢進させる作用を持つ生理活性物質アディポネクチンのプロモーター領域に結合し,その発現を上昇させるPIポリアミドを設計し,糖・脂質代謝への影響を解析しています。加えて,4)カイロミクロン合成に必須のSAR1Bプロモーターに結合し,その発現を低下させるPIポリアミドを設計し,脂質吸収阻害効果のある薬剤の開発を目指しています。   さらに,5)TGFβの発現を抑制するPIポリアミドがラットの皮膚肥厚性瘢痕を抑制することを以前より報告していましたが,ヒトとゲノム構造の近いマーモセットを用いた試験でも,同様の結果を確認しており,ヒト疾患への応用に近づきつつあります。   これらのPIポリアミドの合成は全てペプチド合成器を用いた自動合成法により,我々のグループで行っています。また,難治性疾患の責任分子を制御する各PIポリアミドについては知財として確保し,他学部との共同で前臨床試験を推進してきています。今までに確立したこれらの体制を足掛かりに,PIポリアミドの大量合成法を確立し,安全性や薬物動態および薬物効果等についてのより詳細な前臨床試験,さらに臨床第Ⅰ相試験を行うことができる創薬開発・臨床応用研究拠点の形成を目指しています。ゲノム化学に基づく先進医療開発研究拠点(平成23年度選定)Base for research and development of advanced medical care based on chemical genomics(since 2011)研究代表者:相馬正義|Project Leader:Prof. Masayoshi Soma35

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